Research研究課題

近接場光励起ダイナミクス

光と物質の相互作用は、基礎理学の研究対象のみならず、太陽電池や光触媒に代表される光エネルギー変換デバイスなどの設計等にも関わる極めて重要な物理現象の一つである。光と物質の相互作用を記述するためには、“双極子近似”と呼ばれる簡便な近似を用いることが多いが、物質系に対して光の波長(可視光領域)のサイズが十分に大きく、物質系には空間的に変動の無い一様な“のっぺりした”光が照射されると仮定する。しかし最近では、数十ナノメートル程度以下の非常に精密なナノ構造体の作成が可能となり、この様なナノ構造体と光の相互作用を考える場合には、双極子近似の妥当性が大きく崩れる。光の照射の結果ナノ構造体の局所領域に新たに発生する“近接場光”は、ナノメートル領域で空間的に変動する非一様な光であることが、その理由である。従前の一様な光ではなく、ナノメートル領域での光と物質の相互作用では、新奇な物理現象が起こり、その現象に起因する新たな機能を持った物質開発にも繋がると期待できる。この様なナノ領域で起こる光の相互作用を記述する“ナノ光応答理論”の開発とその理論に基づく計算科学的手法を用いた機能物質開発を進めている。

次図の上段の図は、量子ドットに通常レーザー光(振動電場)と近接場光を照射した場合の模式図を表している。実際に量子ドットの周りに発生する電場ベクトルを計算したものが下段の図であるが、通常光の場合には、電場ベクトルが一様であるのに対して、近接場光の場合には強く歪んだ電場が発生していることが分かる。この歪んだ電場と物質の相互作用が新たな物理と機能を生み出す原因である。

最近の研究成果としては、近接場光には入射光の2倍の振動数を持つ光(2倍波)が本質的に含まれており、この2倍波がバンド幅の広い物質を励起することを見出した。また、近接場光を用いると、電気四重極子遷移や磁気双極子遷移などの禁制遷移も起こせることを見出した。[1] [2]

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